【野菜工場の秘密】(上)地下で、宇宙で野菜栽培(MSN産経ニュース)


MSN産経ニュース 2010年7月22日
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100722/biz1007222125037-n1.htm
「あれ、野菜が高くなってるわ」


大阪市内のスーパーマーケットで、30代の主婦が不満げな表情でつぶやいた。


肌寒い日が続いた今年4月、国内の野菜価格が高騰した。日照不足や天候不順などによるもので、農林水産省が調査した野菜小売価格(全国平均)では、平年に比べキャベツやレタスが40%以上高くなった。


1円でも安い買い物をしたい消費者にとって農産物価格の乱高下は悩みの種だ。平成19年から20年にかけて世界的に原油価格が高騰し、小麦など穀物の価格が急上昇したことも記憶に新しい。


19年7月に設置された有識者による「食料の未来を描く戦略会議」は20年5月の報告書で、新興国の経済発展や異常気象を農産物価格高騰の要因に挙げ、「世界の食料供給は安定性を失いつつある」と警鐘を鳴らした。


こうした危機感を背景に、農業の新たな試みが本格的に動き始めている。そのひとつが「植物工場」だ。


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大阪・本町。ビジネス街の一角に建つ大手商社、丸紅の大阪支社ビル地下2階のある1室に足を踏み入れると、そこは静寂に包まれた紫色の異空間が広がる。


この部屋では、栽培棚に植えられたレタスやハーブなどの野菜が、蛍光灯やLED(発光ダイオード)の光に照らされて成長している。ハーブなら1日あたり300〜400食分を供給できる。


昨年11月に植物工場を設置した丸紅機能化学品部の藤原澄久課長は「外食企業から野菜の安定供給という点で可能性を見いだしてもらっている」と話す。


丸紅は2年前から通常の土の10倍近い保水力を持つ土壌を導入し、植物工場のシステム販売に乗り出した。大阪支社の1室は植物工場の最先端ショールームというわけだ。


反響はあるのか? 「大手の製造業者から『リストラで空いた土地や人員を活用し、新しいビジネスを展開したい』と相談されるケースが増えている」と藤原さんは明かす。


大量生産と機械化が進めば、植物工場でも露地栽培並みのレタス価格が可能という。その時期も「近い将来」と言葉に力を込める。


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植物工場に向けた挑戦は地球上だけではない。


宇宙飛行士、野口聡一さんらが滞在して注目を集めた国際宇宙ステーション(ISS)。ISS内部の日本実験棟「きぼう」で昨年9〜11月、アブラナ科シロイヌナズナを、無重力に近い状態で育てる実験が行われた。


宇宙航空研究開発機構JAXA)と共同で、富山大大学院の神阪盛一郎客員教授らが実施。将来の宇宙での野菜や果物など植物栽培に向けた基礎データを集めるのが目的だ。


自動的に給水、温度・湿度の調節、光のコントロールを行うよう特別に開発された植物実験機(約20センチ立方)の中で、シロイヌナズナを育成。その結果、重力をかけた場合と比べて成長が約2日早かった。


今後、持ち帰ったサンプルの遺伝子など詳細な分析を進めるが、神阪氏は「無重力では代謝のパターンが変わり、野菜の味も変わってくるのでは」と推測する。


太陽も土もない宇宙空間での野菜づくり。その実現の鍵を握っているのが植物工場であり、これは決して遠い夢ではない。


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世界的な食糧危機を背景に、企業や研究機関が植物工場の開発に相次ぎ取り組み始めた。日本の農業を変えようとしている植物工場の現状と可能性を探る。


■植物工場  
閉鎖的、または半閉鎖的な空間で野菜など植物を計画的に生産するシステムで、季節や天候にかかわらず栽培できる。太陽光を使わずに環境を完全制御する「完全人工光型」と、太陽光を基本に雨天・曇天時の照明や室温制御を行う「太陽光利用型」に分かれる。土壌を使う場合と、土壌を用いない水耕栽培の場合がある。



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