野菜工場 (読売新聞)


YOMIURI ONLINE(読売新聞)2010年1月26日
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/trend/kurashi/20100126-OYT8T00465.htm

店内産レタスを料理に


建物の中でトマトやレタスなどを栽培する「野菜工場」が注目を集めています。工場でとれた野菜をメニューに出す飲食店も出てきました。

――野菜工場とはどんなものでしょう。野菜工場を長年研究している社会開発研究センター理事の高辻正基さんに伺います。
高辻さん 「野菜工場は光や温度を人工的にコントロールして、計画的に野菜を生産する施設です。果物や花も栽培するので、広く『植物工場』ともいいます。蛍光灯やLED(発光ダイオード)を使うものと、太陽光を利用するタイプがあり、全国に約50か所あります」


――野菜は本来畑で作るものですよね。なぜ工場が必要なのですか?
高辻さん 「天候に左右されず、安定した収穫が見込めるためです。寒冷で日照時間の短いデンマークやオランダでは、古くから野菜工場を利用してきました。日本の政府も最近、野菜工場の支援を始めました。野菜工場を新たな成長産業に育てれば、その設備や技術をアジアへも輸出できます」



――お店の一角に、小さな野菜工場を持つレストランもあるそうですね。
飲食店情報サイト「ぐるなび」法人営業部の京極政宏さん 「当社は契約する飲食店に、冷蔵庫型のミニ野菜工場を置いています。リーフレタスなどは『シャキシャキしておいしい』と評判です」
日本サブウェイマーケティング部長の今井久さん 「当社は今年、野菜工場を併設した店舗を出す予定です。サンドイッチはレタスやトマトなどを大量に使うので、新鮮な野菜を安定供給できる工場に期待しています。工場を使って、サンドイッチと相性のいい新しい品種のレタスなどを研究し、自前で作ることもできるようになるでしょう」


――野菜の安全性はどうですか。
京極さん 「外部から閉ざされた空間なので、畑より菌が少なく、無農薬栽培も可能です。土を使わない水耕栽培の工場では、そのまま洗わずに食べられるし、日持ちもするんですよ」


――まだ食べたことがないのですが……。
カゴメ生鮮事業部の原田聡さん 「当社は野菜工場の生鮮トマトをスーパーなどで販売しています。ガラス温室では真っ赤なトマトがほぼ1年を通して収穫できます」
高辻さん 「ただ、工場野菜の流通量は、比較的多いレタスでも全体の0・6%程度。まだまだ本格的な普及はこれからです」


――普及のために何が必要ですか。
高辻さん 「工場でとれた野菜の値段は通常の1・5〜2倍ほど高く、生産コストを下げることが課題です。また、少し高くても納得して買ってもらうには、有機野菜のようにはっきり区別して品質をアピールする必要があります。そのための認証制度をぜひ作るべきだと思います」(経済部 武田泰介)


(2010年1月26日 読売新聞)