農家と都会の企業をつなぐ新たな農業ビジネスモデル、「あっぷふぁーむ」の挑戦 (東洋経済)


東洋経済 2010年8月2日
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鳥取米子市内から内陸に向かって約30キロメートル。森林に囲まれた山里風景が広がる日南町は、きれいな水と肥沃な土壌に恵まれた山陰屈指の米どころだ。だが、ご多分に漏れずこの町も、慢性的な農業の担い手不足に悩まされている。人口約5000人のうち約45%が65歳以上。高齢・過疎化は止まらない。


高橋隆造さん(36、上写真左)が、新規就農を志してこの日南町に移り住んだのは1年半前の09年3月。高橋さんは大阪府の出身。農業の経験など、もちろんなかった。それでも、高橋さんがこの地で設立した農業生産法人「あっぷふぁーむ」は今、地元の大きな期待を集め、話題を呼んでいる。その理由は、かつて地元では誰も考えつかなかった新たな農業のビジネスモデルにある。


あっぷふぁーむは、自らが管理する約1ヘクタールの田んぼで米作りに取り組みながら、企業を対象とした水田の「オーナー制度」を運営している。大阪や東京の企業が町内の水田のオーナーとなり、地元農家が実際の米作りを行う仕組みだ。


それぞれの水田には、オーナーとなった企業の看板が設置され、収穫した米はオリジナルの米袋に詰めて、オーナーの元に届けられる。


水田のオーナー制度を運営しているところはほかにもあるが、その多くは個人向けのもの。あっぷふぁーむは企業だけをオーナー対象としている。

オーナー企業は、こうした米を中元や歳暮などの贈答に利用することで、「環境保全」や「食へのこだわり」などといった企業のイメージ向上につなげることができる。社員教育や福利厚生の一環として、自らの契約水田で農作業体験を行うこともできる。
 

一方で、地元農家の収入は安定し、農作業体験などの交流会を実施することで町は活気づく。あっぷふぁーむは、こうした企業と農家の仲介役を担っているのだ。


水田の単価は、10アール(収穫が保証される玄米45キログラム)当たり3万円(2010年度、特別栽培の水田の場合は3・3万円)。この料金には、苗代、肥料農薬代から保冷保管料、梱包費や送料(12回分)、台風など災害時の保険料などが含まれる。

たとえば、12アールの水田でオーナー契約を結んだある企業の場合、その料金は36万円で収穫量は540キログラム。10キログラム入りのオリジナル米袋に詰めた40口、合計400キログラムを贈答用に、残り140キログラムを自家消費に回した。


今年度は、約30社の企業とオーナー契約を締結している。高橋さんは、農作業の合間に大阪や東京へも足を運び、かつて仕事をしていた頃に築いた人脈を基に営業活動を行う。オーナー契約を結んだ企業の業種は、教育関係から外食、不動産、美容関係など幅広い。
 

オーナー企業からは、「もっと広い水田はないか」と、追加契約の依頼を受けることも多いという。


●野菜栽培で大赤字、農業の課題を実感
会社設立2年目にして、早くも軌道に乗ったように見えるが、ここまでたどり着くまでに、高橋さんにもいろいろな紆余曲折があった。


もともと高橋さんは、2人の仲間とともにこの日南町にやって来た。農業指導を受けながら、3人でジャガイモやピーマンなどの栽培を始めたが、そう簡単にはうまくいかない。収入が得られるどころか、大きな赤字を抱えることとなり、ほかの2人は日南町を離れた。


だが、高橋さんには都会に戻れない事情があった。学生時代に発症して以来、苦しめられてきたパニック障害の発作が、自然豊かな日南町に来てからぴたりとやんでいたのだ。


自ら野菜の栽培に取り組みながら、農業が抱える課題を実感すると同時に、「この地で本気で農業に取り組もう」と決意した。


高橋さんは、農業に欠けているのは、安定した収入を得るためのシステムであるとつくづく感じていた。その年ごとに単価が変動する不安定な世界で、1年かけて農作物を作るリスクが農家を苦しめているのではないか。
 

せっかく豊かな自然環境の下でいいコメを作っても、市街地に近い国道沿いの水田で作られたコメと同じ袋に詰められて、十把一絡げで出荷されている。ただ作るだけでなく、売ることまで見据えたシステムを構築しなければ、農家は苦しくなるばかり。
 

ならば、自分が消費地と日南町の間に立って、販売の部分を担えばいい――。あっぷふぁーむのビジネスモデルはこうして生まれた。


高橋さんの構想を聞いて、町会議員も務める地元農家の三上惇二さん(65、上写真右)は「おもしろい」と思った。三上さんは、集落営農を組織したり、10年前から付加価値の高い特別栽培を始めたりと、地域でも先進的な考えの持ち主。
 

「この青年は、地元の人間にはなかなか思いも及ばない新しいことを考える」と、都会から来た高橋さんに一目を置いている。


そして、何十年も日南町で農業を営んできた地元農家の人たちが、次々とあっぷふぁーむの企画に乗り出した。今では、7件の農家の約2・8ヘクタールが、「あっぷふぁーむグループ」の水田として管理されている。


9月には、オーナー企業の関係者を日南町に呼んで「収穫祭」を開催する予定だ。準備に駆け回る高橋さんをサポートしながら、地元農家の人たちもその日を楽しみに待ちわびている。


●心の病を抱える若者をもっと受け入れたい
「農業の担い手はまだ足りない。もっと会社を大きくして、若者たちを受け入れたい」と高橋さんは話す。


あっぷふぁーむには今、高橋さんのほかにもう1人の社員がいる。茨城県出身の矢吹健太郎さん(21、上写真中)は、高橋さんに誘われて今年3月から日南町にやって来た。今では日に焼けた明るい笑顔を見せるこの青年も、心の病を抱え、実は2年以上も引きこもりを続けていたのだ。


矢吹さんは今、毎朝7時に起きて、自分が管理する2つの水田を回って農作業に取り組む。太陽の下で汗を流し、近所の人が心配して様子を見に来ると、しばし休憩して世間話に花を咲かせる。地域の共同作業に駆り出されれば、地元の誰よりも働く。
 

矢吹さんに農業指導を行う戸崎實俊さん(78)も、「貴重な若き働き手」として頼りにしている。月給は12万円ほどだが、日南町での生活に余計な出費はないので、まったく不便はないという。


自然豊かな環境、規則正しい生活、汗を流しながらの力仕事……。これらが、都会で疲れ切った心を癒やすのは言うまでもない。だが、矢吹さんに何よりも大きな影響を与えたのは、地元の人たちとの付き合いだった。
 

この地域では、一人では生きていけないが、毎日顔を合わせる近所の人たちとの絆は日に日に深くなる。親以上に年齢の離れた人たちとの何気ない会話が、矢吹さんに自然と笑顔をもたらすのだ。


高橋さんは、「自分のように心の病を抱える都会の人たちに、安心して暮らせるライフスタイルを提案したい」と力を込める。
(堀越 千代 =東洋経済オンライン)

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農業生産法人 株式会社あっぷふぁーむ
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農業生産法人 - Google 検索
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社団法人日本農業法人協会 
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農業法人ってなに? -- (社)日本農業法人協会
http://hojin.or.jp/standard/i_about.html
農業法人農業生産法人
●設立手順
農業生産法人を設立するためには…
●農業経営の法人化の意義と利点
農業生産法人数の推移