日証協、未公開株の新規制無期限延期 トラブル防止、つめ甘く裏目に(サンケイビズ)


SankeiBiz(サンケイビズ)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/100721/bse1007210504006-n1.htm

日本証券業協会は20日、同日から実施する予定だった未公開株に関する証券会社向けの新たな規制を無期限で延期すると発表した。この日開催された自主規制会議で、規制の延期と代替案の検討を継続することを決めたため。


新規制は、ベンチャー企業などが自社の未公開株を個人投資家に直接売るなど「自己募集」という手法で資金を集めていた場合、証券会社による上場引受を認めないというもの。該当企業は事実上、上場できないことになる。


日証協が規制に動いたのは、自己募集を悪用した振り込め詐欺事件の横行がある。国民生活センターによると、未公開株をめぐる相談件数は、昨年度6107件と前年度比で倍増。今年度も7月6日までで1291件と、前年同期比のほぼ倍の水準に達しているという。このうちの相当数が自己募集に関連したものという。「未公開株を高値で買い戻すとの約束を信じて購入し、1人で数千万円の被害にあった人もいる」(同センター)


日証協では、こうした詐欺被害の未然防止策を検討、6月に新規制案を公表し、今月20日から実施するはずだった。しかし、実施に先立ち、規制案に関する意見を募ったところ、「ベンチャー企業が個人の出資を受けられなくなる」といった批判を中心に、約370件の意見が寄せられた。


20日に記者会見した前哲夫日証協会長は「多くのコメントが寄せられており、これをふまえて対応を改めて議論していく。いつまでという時期は考えていない」と規制の無期限延期の方針を説明した。ただ、「けっして白紙ということではない」とも述べ、新たな規制を検討していくことも明言した。


経営実績がないベンチャー企業は、金融機関や企業からの資金調達が難しく、エンゼルと呼ばれる個人投資家に依存せざるを得ないのが実情。規制が実施されれば、多くのベンチャー企業が事実上、上場への道を断たれる可能性もある。国の成長力の源泉ともなり得るベンチャー育成には、多様な資金調達手段の確保が不可欠だ。


日証協では、未公開株を売買する「グリーンシート」などの制度も立ち上げているが、銘柄指定の基準が厳しい。景気低迷もあり、指定銘柄数は減少傾向にある。「中小企業向けの政府資金は潤沢だが、起業に関する支援は少ない」(ベンチャーキャピタル)との指摘もある。(高山豊司)