農業への関心高まりは、担い手の不足解消につながる?(毎日新聞)

毎日新聞 東京朝刊 2010年4月24日 
http://mainichi.jp/select/wadai/naruhodori/news/20100424ddm010070127000c.html

◆農業への関心高まりは、担い手の不足解消につながる?


◇進む高齢化に追いつけず 学校や自治体の取り組みに期待
なるほドリ 農業に関心が高まっているというけれど、学生の動向は?


記者 東京農業大は今春、受験生が全学部で6・6%、農学部では15・1%前年より増え、「『食の安全・安心』や『食料自給率改善』への取り組みが関心を引いたのでは」と入試センターの担当者は分析しています。一方、農業高校を昨春卒業した生徒のうち、すぐ就農した者は前年より微増の1・3%ですが、将来就農する意欲を持った大学や農業大学校への進学者を含めると6%近くになります。


Q 農業を新たに始めた人はどれぐらいいるの?
A 農林水産省の調査では、08年の「新規就農者」は6万人で、同じ基準で統計を取り始めた06年より2万人以上減りました。


Q それでは将来農業をする人が不足しない?
A 「足りなくなる」という声はよく聞きます。3月末に閣議決定された今年度からの農政の中期指針「食料・農業・農村基本計画」にあわせた農水省の試算では「(農業の)仕事が主」の人を指す「基幹的農業従事者」(昨年191万人)が「若年世代では下げ止まりの動きも見られる」ものの「高齢化が進行」し、20年には「145万人程度」に減ると見込んでいます。


Q なぜ減るの?
A JA総合研究所の横田茂永主任研究員は「農産物の価格低迷が大きい」と指摘しています。07年の日本全体の生産農業所得は10年前に比べ約35%も減りました。


Q 国は対策を講じていないの?
A 戸別所得補償制度はその一つです。農水省は、経営耕地面積30アール以上または農産物販売額50万円以上の「販売農家数」について、昨年の170万戸が「現在のすう勢のまま」では20年に111万戸まで落ち込むものの、同制度で「意欲あるすべての農家が農業を継続できる環境が整い」「新規参入が徐々に増加する」と「121万戸程度にとどまる」と試算しています。


Q せっかく高まっている関心を、就農につなげられないかな?
A 市民農園レベルから就農レベルまで数段階に分かれた研修ができる仕組みを作り、非農家や他産業で働いてから農家を継ぐ人も含め、それぞれにあった形で「農」にかかわれるようにした自治体もあります。人数確保も大切ですが、農業経営のできる人材確保が重視されるようになっており、自治体や学校の取り組みから優れた就農者が次々生まれるよう期待したいですね。