予約1カ月待ちも!“野菜レストラン”人気の理由 (日経トレンディネット)


日経トレンディネット 2010年02月22日
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20100216/1031027/
外食といえばステーキや寿司といった肉・魚介類が“華”だったが、ここ1〜2年、サラダバーや野菜しゃぶしゃぶといった「野菜」をウリにしたレストランが人気を集めている。そこで都内を中心に展開している「農家の台所」と「やさい家めい」、「有機野菜レストランHOKU」の3店を取材し、その背景を探った。


まず、“野菜レストラン”はどれほどの人気を集めているのだろうか。


「恵比寿店では予約が1カ月待ちということも珍しくありません」と語るのは、「農家の台所」を運営する国立ファーム(本社:東京都国立市)の広報担当・山口慎司氏。「大手レストラン情報サイトでアクセス数がトップになるなど、注目されているのを感じる」(山口氏)という。「やさい家めい」を運営するイートウォーク(本社:東京都目黒区)の広報担当者も、「ランチ、ディナーともにピーク時は満席状態。リピーターも多い」と語る。


客層は20代〜30代の女性が中心だが、「メタボを気にする男性客もいます」(イートウォーク広報担当者)とのこと。健康を気にする人であれば利用客は男女問わないようだ。


3店ともに旬の新鮮な野菜を提供しているが、それらは近所のスーパーなどで気軽に購入できる野菜ではない。国産の有機野菜・無農薬野菜や全国各地のブランド野菜、変わった方法で栽培された野菜など、高付加価値の野菜を使用。またメニューにサラダや蒸し料理、バーニャカウダ(オイルフォンデュの一種)などが多いのも特徴。これらのメニューは野菜本来の風味や歯ごたえを楽しめるもので、煮物や漬け物などに代表される伝統的な日本の野菜料理とは一線を画したアプローチといえる。

●「健康・安全」だけでなく、新たな野菜を知るきっかけにも
野菜レストランの人気の背景として、ここ数年来の健康ブームもあるだろうが、3店舗ともに“食の安全”を強調する。


有機野菜レストランHOKU」(東京都世田谷区)のオーナーシェフ・井上和洋氏は、「中国産食材の問題などをきっかけとして、安全・安心な野菜への関心が高まったように感じる」と指摘。今回紹介した3店を含む多くの野菜レストランでは使用している農作物のトレーサビリティを重視しており、厳選した契約農家からの仕入れ態勢を整えている。野菜レストランは単にヘルシーでおいしい料理が楽しめるというだけではなく、“生産者の顔が見える”安全・安心感も人気の理由となっているわけだ。


さらにこういったレストランでは、珍しい野菜に触れられるのも魅力の一つ。市場に出回りにくい品種を提供しているだけでなく、「それぞれの野菜の特徴や生産者のこだわりを直接その場で説明できる」(国立ファーム・山口氏)。その野菜にどんな優れた点があるのか、どうやって生産されているのかなども知ることができるのだ。「農家の台所」では野菜の店頭販売も行っているが、レストランで食べた野菜を気に入って、その場で購入していく人も多いという。


●「野菜」そのものへの関心が高まっている
野菜レストラン人気の背景には、野菜そのものへの意識の高まりも大きい。


下記のグラフは、有機野菜の宅配サービス会社「らでぃっしゅぼーや」(本社:東京都港区)が20〜60代の既婚者男女1000人を対象に調査した結果だ。野菜に対して「とても好き」、「どちらかと言えば好き」、「どちらかと言えば嫌い」、「とても嫌い」のどれかを選ぶというものだが、各年代で「とても好き」と答えた人が前年より増えていることがわかる。特に20代に顕著で、2008年は「とても好き」が40.0%だったのに対して、09年は56.8%にまで上昇している。


この結果について同社広報担当の益 貴大氏は、「野菜を食べるということがカッコいいことだと考えられている」と指摘。益氏は野菜が持つ健康や“食の安全”のメリットも指摘しつつ、「不況の影響で、野菜を自分で調理する弁当男子が増えました。またメディアや農林水産省の働きかけもあって、農業自体も盛り上がっています。つまり野菜という食材が時代にマッチしているわけです」と語る。


らでぃっしゅぼーや調べ


同じく、野菜に対する意識の強まりを指摘するのは、「野菜ソムリエ」(正式名称「ベジタブル&フルーツマイスター」)の育成と認定を行っている日本ベジタブル&フルーツマイスター協会の広報担当・松元 聡氏。2001年以来、毎月600〜700人もの野菜ソムリエが誕生しているというが、実はその多くが主婦や食関係以外の企業に勤めるOLなどの一般消費者層だ。なぜ主婦やOLが、それほどまでに野菜に関心を抱いているのだろうか。松元氏は、野菜ソムリエが増えている要因として「野菜についての情報の飢餓状態」を挙げる。「現在、核家族化や八百屋の減少などによって、野菜のことを知っている人が身近にいなくなりつつあります。しかしその一方で食品の安全性など問題もあります。そのため、もっと野菜のことを知りたいという人が増えているのです」。


健康志向や“食の安全”、農業の盛り上がりなど、野菜への意識が高まりをみせるなか、野菜レストランの人気は当分衰えそうにない。

(文/糸数 康文=Office Ti+)