【野菜工場の秘密】(中)先端技術が支える「畑」(MSN産経ニュース)


MSN産経ニュース 2010.7.23
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100723/biz1007232117028-n1.htm
東京・丸の内。昼休み中のサラリーマンやOLがサンドイッチをほおばり、満足げな表情を浮かべた。


「このレタス、シャキシャキしておいしい」


「無農薬だし、安心して食べられるね」


人気サンドイッチチェーン「サブウェイ」を展開する日本サブウェイが今月6日、丸ビル(丸の内ビルディング)内に開設した新店舗「野菜ラボ」。最大の特徴は、店内中央に設置されたショーウインドーのような植物工場だ。


客席は工場を囲むように配置されており、入店客は野菜の“産地”を見ながら食事をすることができる。


「店産店消」をキーワードに掲げる同店では、販売するサンドイッチに使うレタスの約5%(1週間当たり約20個)を店内生産でまかなう。開発・設置費用は約500万円。「物流費と時間を軽減でき、お客さまにも安心感を持ってもらえる。3店目まで設置し、その後はメリットを確かめながら拡大を検討したい」と担当者は意欲をみせる。


     ■


植物工場に商機を見いだすのは、一見して農業に縁のないような最先端技術を持つ企業が大半だ。


「農業ってこんなスマートなものかと、若い人に思ってもらえるようにするのが私たちの夢」。制御機器メーカー、IDEC(アイデック、大阪市淀川区)の舩木俊之会長兼社長はこう語る。


同社は旧富山事業所(富山市)の敷地内に約320平方メートルのビニールハウスを建て、昨年9月からイチゴ栽培の実証実験を始め、この春には甘いイチゴを大量に収穫した。


常駐した社員はわずか数人。ハウス内部には約30年の実績があるLED(発光ダイオード)照明と、水質浄化に有効なGALF(超微細気泡発生技術)を導入した。


LEDは明るさや色調などを調節できるため、病害虫を防ぎ、富山のような冬に日照の少ない土地でもイチゴ栽培を可能にした。GALFは育成速度や味の向上が期待でき、これらを同社が得意とする自動制御システムで一元管理する。


「平成24年度までにシステムを事業化したい」と舩木社長は目を輝かす。


     ■


植物工場は、日本より自然条件の厳しい海外にも広がりをみせている。


三菱化学が今年1月、伝統的な農業の姿とは全くかけ離れた植物工場を発売した。貨物船用コンテナで野菜を育てる「コンテナ野菜工場」で、1基5千万〜1億円という価格にもかかわらず、中東を中心に問い合わせが相次ぎ、今秋には第1号機をカタールの実業家に納入を予定している。


工場内部にはLEDなどの照明と空調、水循環設備を備え、1日50個程度のレタスや小松菜を栽培することができる。電源はコンテナに導入された三洋電機による太陽電池と高容量リチウムイオン電池を組み合わせたシステム。太陽電池で発電し、リチウムイオン電池に蓄電する仕組みで、砂漠や寒冷地でも農業が可能となる。


現在は電力会社の商用電源との併用だが、「将来的には太陽光のみによる稼働も視野に入れている」(三菱化学)。


先端技術を駆使することにより、自然を克服した形で野菜を栽培できる植物工場。その存在はビジネスの域を超え、世界を食糧危機から救う可能性さえ秘めている。