AVも野菜も刺激 農業改革に挑戦、元AVメーカー社長 (MSN産経ニュース)

mikamurata2009-11-05

MSN産経ニュース 2009/11/05
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091105/fnc0911051004006-n1.htm
【原文】Porn Maker Turned Farmer Joins Move to End Japan Co-Op’s Grip
(Bloomberg.com October 29, 2009)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601101&sid=aMwxlV8jkEr8

アダルトビデオの制作販売会社在籍時代に10億円を稼ぎ出した元社長が農業生産者に転身、独自流通を通じて、年間約4兆700億円の税金が投入される日本の農業制度の変革に挑んでいる。


この元社長は高橋がなりさん(50)で、10億円を元手に意識の高い消費者を対象にした野菜と果物の生産・流通を手掛ける「国立(くにたち)ファーム」(東京都国立市)を立ち上げた。


現在、世界で最も多額の補助金がつぎ込まれている国内の農業制度に頼らず、全国農業協同組合連合会(JA)を通じてではなく自社流通で消費者に直接販売することを目指す生産者が増えており、高橋さんもその一人だ。


「農業もポルノと同じ。収益を上げていくには、イメージを変えないといけない」。2006年に設立した国立ファームで高橋さんはこう語る。「ダサイから、かっこいいというイメージにしないといけない」。ナスやピーマンはオンライン販売のほか、直営の野菜レストランでも直売されている。


高橋さんのような農業生産者は、日本におけるコメと野菜の流通で独占的な地位を占め、組合員に供給する肥料などの価格を決定する農協に挑んでいる。東京大学大学院農学生命科学研究科の本間正義教授は、このような動きが今後、農業補助金の縮小だけでなく、農産物の価格低下や農業貿易交渉の合意促進にもつながり得ると指摘する。


本間教授は、「こうした動きは既に起こっている」とした上で、「こうした生産者は賢い。市場を調べ、独自の判断を行っている」と説明した。


5月に発表された調査によれば、JA組合員の過半数が、流通経路に関する不満を抱いている。JAによると、07年までの2年間で組合員数は10万人減り、490万人になった。一方、農林水産省の統計によれば、08年の農業新規就労者は1万400人と、06年の8700人から増加している。本間教授によると、その多くは独立した野菜生産者だという。


経済協力開発機構OECD)の日本農業に関する報告書の共著者であるロジャー・マルティニ氏は10月21日、東京で開かれた記者説明会で「支援を最も受けていないこれらの生産者が成功しつつあることは意外ではない」と述べ、「彼らは消費者に重点を置いており、独自の供給ルートとマーケティングを作り上げた」と説明した。


JAに頼らず、独自の野菜直売店を通じて販売する生産者グループ「ベリベジ」の代表、齋藤正明氏(30)は、「自分としては補助金を受け取るつもりはないし、農業は衰退していると人に思われたくない」と語る。JAの組合員でもある同氏は「生産者は生産から梱包(こんぽう)、販売に至るまで主導権を握る必要がある」と述べた。


日本の農業構造は、戦後の食糧不足を解消しようと政府主導で生産が提唱されるなかで構築された。OECDによると、日本の農家が所有する平均土地面積は人口の少ない北海道を除いて平均2.3エーカー(約9300平方メートル)だが、米国は1065エーカーとなっている。


JA全中の甲斐野新一郎・総合企画部部長は、「大規模農家や企業的な農家が育たなかったのは農協のせいだ」との批判があるが、これは農業構造が原因であり、農協は「組合員の選択に合わせた事業をしてきた」と反論する。


神奈川県で養豚業を営む宮治勇輔さん(31)は、「日本の農業構造は戦後の復興期や高度経済成長期には意味を成していた」と認める一方、「経済が低迷して以降、JAは高価格を確保できていない」と指摘する。


慶応大学を卒業後、情報技術(IT)企業を経て実家の養豚農家を継いだ宮治さんは、バーベキューイベントや通信販売を通じて豚肉のマーケティング活動を行っている。JAには加盟しているものの、販促と流通を推進してきたこの2年間で収入は倍増したという。


高橋さんは農業を始めたことで、職業を子供に隠す必要がなくなったと語る。現在、完熟しても白い「ホワイトいちご」の販売に力を入れているが、多額の起業コストがかかったことなどから利益を出すには至っていない。目指すのは「野菜を嗜好品にすること」だ。「AVでお客は刺激を買っている。同じように刺激物を売るという意味で、嗜好品として提供したい」と抱負を語っている。
ブルームバーグ Stuart Biggs、Sachiko Sakamaki)