個人VB投資、米、2年連続減少 09年8.3%減、件数微増でも小粒に

日本経済新聞 夕刊 2010年4月5日


米国で「エンジェル」と呼ばれる個人投資家ベンチャー企業への投資額が2009年に2年連続で減少した。ニューハンプシャー大学によると、09年の投資額は前年比 8.3%減の176億ドル(約1兆6500億円)。米国のベンチャー企業育成で、リスクマネーを提供するエンジェルの役割は大きい。エンジェルの投資回復が遅れ続ければ、産業界の新陳代謝が鈍る恐れもある。


同大のベンチャー研究センターの調査によると、エンジェルの投資額は金融危機が起きた08年に前年比で26.2%減少していたが、09年も回復しなかった。一方、09年にエンジェルの投資を受けた起業家によるベンチャー企業は5万7225社。08年から3.1%増加しており、エンジェルの投資案件が小粒になってきているようだ。


最大の投資対象業種はソフトウエアで、全体の19%を占めた。ヘルスケア分野のサービス・機器、製造業・エネルギーがともに17%で続いた。投資回収の手段はM&A(合併・買収)が54%を占めて最も多かったが、全体の40%は法的整理に見舞われた。「多産多死」のベンチャー投資の性格が色濃く出ている。


米国のエンジェルは自ら起業などで成功した経営者、巨額の資産を持つ富裕層ら。起業の初期に事業資金を出すことが特徴だ。その動向はベンチャーキャピタル(VC)と並び、米国のシリコンバレー東海岸ベンチャー企業の立ち上げや成長を支えてきた。同センターによると、エンジェルの投資によって米国で09年に25万人の雇用が生まれたという。

【ニューヨーク=武類雅典】